ラックアジャストメントとは (Luck Adjustment)
On-offのデータというのは、とある選手がコートにいる時に、(同じ選手がベンチにいる時と比べて)そのチームはどういうパフォーマンスをするのかという一つの指標として使われます。しかし、Nylon Calculusなどの調べによると、生のon-offのデータはノイズが多く、予想をするのに使う数字としては改善が必要だと言われています。
まず最初に、「実際に起きたこと」と「次に起こると予想されること」というスタッツの概念について軽く説明します。生のスタッツは、「実際に起きたこと」の数値です。しかし、それだけでは次に起こることが予想できるわけではありません。全く関係のない話にはなりますが、簡単に一つ例を挙げてみましょう。
2人のシューターがいるとして、シュートを10本ずつ打つとします。1人目は、5本スパっと決め、5本惜しい外し方をしました。2人目は、5本リングに当たりながらも決め、5本惜しくもない外し方をしました。この時、2人ともシュート率にすると50%ですが、もう10本ずつシュートを打ったとしたら、どちらのシューターの方が多く決めると思いますか?
凄く極端な例ですが、この場合50%というシュート率が「実際に起きたこと」で、それが「次に起こると予想されること」と違うことがある、ということが伝わったかと思います。将来を予測するようなスタッツの方が作ることは難しく、有用であります。この概念がon-offのレーティングでどのように使われるかというと、見方と相手のシューティングラック(運)を調整するのに使います。
バスケットボールには、選手1人のレベルでコントロールできない、またはコントロールがしにくいと言われているカテゴリーのスタッツがあります。それらのスタッツを調整することによって、生のon-offのデータから少しでもノイズを消し、より「次に起こると予想されること」を表すスタッツに近づけようという試みが、今日紹介するラックアジャストメントというものになります。ここで調整をするのは次の4項目です。
1. 味方のフリースローの確率
2. 味方のスリーポイントの確率
3. 相手のフリースローの確率
4. 相手のスリーポイントの確率
これら4つの数値は、選手1人ではコントロールができない、もしくはしにくいものとされています。特にフリースローの確率は容易に想像がつくと思います。誰をファウルするかというのはコントロールができるところではありますが、実際の確率はディフェンスのしようが無いシュートなのでコントロールができません。
私がPIPMに使うon-offのデータは、すべて Bリーグ 私的データベース さんからいただいているものです。これが無ければPIPMが完成することはなかったので、大変感謝をしています。
2020-21シーズンの宇都宮ブレックス、喜多川修平選手の実際の数字を紹介しながら説明を続けます。彼のチームメイトのシーズンを通しての3PT%は34%でしたが、喜多川選手がコートにいたときのチームメイトの3PT%は29%でした。味方の3PT%というものはコントロールしにくい物ではありますが、スリーをクリエイトするのが上手い選手がコートにいれば確率は多少上がることもあるので、ここではアテンプト数に重みを付けて、加重平均を使います。
細かい計算としては、{(392 * 29%) + (1265 * 34%)} / (392 + 1265) = 32% とします。
この32%という数字を実際に起きた29%の代わりに使って計算をすることが、ラックアジャストメント(の一部分)です。
味方のスリーポイントの確率のみ加重平均を使った少し複雑な計算が使われますが、残りの3つはもっと単純です。オンコートのチームメイトのフリースローの確率は、シーズンを通した味方のフリースローの確率に置き換えます。また、オンコートの相手のスリーポイントの確率・フリースローの確率は、それぞれシーズン平均の被3PT%・被FT%に単純に置き換えて、それぞれの成功数を計算します。
これらの調整された数字を使い、各選手のオンコートのラックアジャストされた得点を計算します。そして、ここで知りたいのはORTGとDRTGですので、ポゼッション数のデータを用いて各レーティングを計算します。
ここで求めたラックアジャストされたORTG・DRTGが、PIPMを計算するのに重要な数字になってきます。
記事原文: Nylon Calculus: Defining and calculating luck-adjusted ratings for the NBA
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